凝集剤で処理が難しい界面活性剤とは?

研削液・研磨液・洗浄排水などを扱う現場では、
「凝集剤を入れてもフロックが出ない」
「白く濁っているのに沈まない」
「薬剤を増やしても改善しない」
といった経験をされた方も多いのではないでしょうか。
こうしたケースで関係していることが多いのが、界面活性剤です。
本記事では、
- 界面活性剤とは何か
- なぜ凝集処理が効きにくくなるのか
- 現場条件によっては対応できるケース
- 「界面活性剤は悪なのか?」という誤解
を、現場目線で整理します。
界面活性剤とは何なのか(現場での役割)
界面活性剤とは、水と油のように本来混ざらないものを安定して混ぜるための成分です。
分子の中に、
- 水になじむ部分(親水基)
- 油になじむ部分(疎水基)
の両方を持っています。
研削液や研磨液では、界面活性剤によって、
- 油分を微細な状態で水中に分散させる
- 研磨粒子を均一に分散させる
- 加工ムラや再付着を防ぐ
といった加工を安定させるための重要な役割を果たしています。
現場で言えば、
「界面活性剤があるから加工が成り立っている」
という側面も大きい成分です。
なぜ界面活性剤があると凝集処理が難しくなるのか
凝集処理は、水中に浮いている粒子(SS)を集めて重くし、沈める処理です。
ところが、界面活性剤が存在すると、次のような状態になります。
界面活性剤そのものはSSではない
界面活性剤は水に溶けた溶解成分であり、粒子として存在していません。
そのため、
- 沈殿しない
- ろ過で捕まらない
- 凝集剤が付着する「表面」を持たない
という性質があります。
他の成分まで凝集しにくくする
現場でより問題になるのは、界面活性剤が周囲の成分の挙動を変えてしまうことです。
- 油分が乳化して、非常に細かい油滴になる
- 研磨粒子やSSの表面が界面活性剤で覆われる
- 粒子同士がくっつこうとしても反発する
結果として、
- フロックができにくい
- できても軽く、浮上する
- 凝集剤を増やしても改善しない
といった現象が起こります。
見た目は濁っているため「SSが多そう」に見えますが、凝集処理の前提条件が成立していない状態になっています。
凝集処理で対応できるケースはあるのか(現場判断)
結論として、条件次第では対応できるケースもあります。
比較的うまくいきやすい条件
- 界面活性剤の濃度が低い
- 乳化の程度が弱く、油滴が比較的大きい
- SS量が多く、粒子同士が接触しやすい
- 希釈などにより分散状態が緩和されている
このような場合には、凝集剤の種類や撹拌条件を調整することで、SSとして回収できる部分が出てくることがあります。
オイルフロックで対応できる場合について
なお、排水中の油分や有機成分の状態によっては、オイルフロックのような油分・疎水性成分に特化した凝集剤を用いることで、 乳化した成分が除去できる場合があります。
特に、
- 乳化が比較的弱い
- 界面活性剤濃度が低い
- 油分が凝集可能な形で存在している
といった条件では、油分がフロック化し、SSとして回収できるケースが見られます。
ただし、これは界面活性剤そのものを分解・除去しているわけではなく、 状態が整った場合に限って効果が現れるという点には注意が必要です。
すべての乳化排水に有効というわけではないため、原水の性状を確認したうえでの適用判断が重要となります。
界面活性剤は「悪」なのか?
ここで誤解されがちですが、界面活性剤そのものは悪者ではありません。
界面活性剤は、
- 家庭用洗剤
- 工業用洗浄剤
- 食品・医療・化粧品分野
など、私たちの生活や産業に欠かせない存在です。
また、界面活性剤は
- 排水基準が定められている
- 下水処理場や排水処理設備で分解・処理されている
- 生分解性を考慮した設計が進んでいる
といった前提のもとで使用されています。
問題になるのは、性質を理解せずに「凝集処理だけで何とかしようとすること」です。
まとめ(現場で押さえるポイント)
- 界面活性剤はSSではなく溶解成分
- 凝集処理は界面活性剤の除去を前提とした処理ではない
- 界面活性剤は加工・洗浄に不可欠な成分
- 条件次第ではオイルフロックで対応できるケースもある
- 原水の状態を見極めた処理選定が重要
排水処理を考える際は、
「何がSSで、何が溶けているのか」
「なぜ今の状態になっているのか」
を整理することが、無駄な試行錯誤を減らす近道になります。
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