凝集と吸着の違いとは?|吸着でなければ除去できない成分と処理の使い分け
水処理では「凝集」と「吸着」という言葉がよく使われます。
どちらも汚れを除去するための方法ですが、働く仕組みや対象成分はまったく異なります。
「凝集」と「吸着」の違いとはなんなのか、その違いをわかりやすく整理し、「吸着でなければ取れない成分」の特長も紹介します。
凝集とは|水中の粒をくっつけて沈める処理
凝集(coagulation / flocculation)とは、水中に浮かんでいる微粒子やコロイドを薬剤の力でくっつけて大きな塊(フロック)にする処理方法です。
たとえば、PAC(ポリ塩化アルミニウム)や硫酸アルミニウムなどの無機凝集剤、高分子凝集剤を用いることで、水中の粒子同士が中和・結合します。
凝集のしくみ
- 凝集剤の添加:粒子表面の電荷を中和
- 撹拌による衝突・結合:フロック形成
- 沈降・分離:フロックを沈めて清澄化
凝集で除去できる主な成分
- SS(懸濁物質)や濁り
- 微細な土砂や粉体成分
- コロイド状有機物
- 乳化した油分(条件により)
- 金属酸化物やスラッジ成分
凝集の特徴
項目 | 内容 |
---|---|
主な薬剤 | PAC、高分子凝集剤、水澄まいるなど |
対象 | 濁り、SS、浮遊物 |
反応速度 | 数分〜数十分で沈降 |
得られる結果 | フロック沈殿・上澄みの清澄化 |
限界 | 水に溶けている成分は除去できない |
吸着とは|溶けた成分を取り除く仕上げ処理
吸着(adsorption)とは、水中に溶けて存在する成分を固体の表面に引き寄せて固定し、除去する方法です。
凝集が「粒を沈める処理」であるのに対し、吸着は「溶けている成分を取り除く仕上げ処理」として利用されます。
吸着のしくみ
吸着剤の表面には無数の微細な孔(細孔)があり、その中に汚染成分を引き寄せて固定します。
この過程で、溶解性の汚染物質も効率よく除去されます。
主な吸着剤と特徴
吸着剤 | 主な用途・対象成分 | 特徴 |
---|---|---|
活性炭 | 有機物・臭気・着色成分・界面活性剤など | 表面積が大きく、幅広い有機物に有効 |
ゼオライト | アンモニア・一部の金属イオン | イオン交換性があり、再生可能 |
イオン交換樹脂 | 溶解性イオン、有機酸、金属イオン | 高選択性で精密除去に対応 |
酸化鉄系吸着剤 | リン・ヒ素などの陰イオン | 化学反応を伴う強固な吸着が可能 |
吸着で除去できる主な成分
吸着が効果を発揮するのは、凝集では落とせない溶解成分です。
有効な対象例
- 有機物(COD成分、界面活性剤など)
→ 凝集では落としにくい溶解性物質を除去 - 臭気・着色成分(フミン酸など)
→ 活性炭による脱臭・脱色 - アンモニア態窒素(NH₄⁺)
→ ゼオライトによる吸着除去 - リン・ヒ素などの陰イオン成分
→ 酸化鉄系吸着剤が高い除去率を発揮
注意が必要な例
- 溶解性鉄(Fe²⁺)やマンガン(Mn²⁺)は、そのままでは吸着しにくい
→ 一度酸化(Fe³⁺化)して凝集沈殿させ、その後吸着で残留除去が効果的
→ 実際には「酸化+凝集+吸着」の組み合わせ処理がよく用いられます
凝集と吸着の違いを比較
比較項目 | 凝集 | 吸着 |
---|---|---|
主な目的 | 濁りや浮遊物の沈殿除去 | 溶解性物質の除去 |
原理 | 粒子を中和・結合させて沈める | 固体表面に汚染物質を引き寄せて固定 |
処理対象 | SS、泥、コロイド、有機スラッジなど | 有機物、臭気、溶解性イオンなど |
主な薬剤・材料 | PAC、高分子凝集剤、水澄まいる | 活性炭、ゼオライト、酸化鉄系吸着剤 |
処理時間 | 数分〜数十分 | やや長い(接触時間が必要) |
メリット | 処理速度が速くコストが低い | 微量成分まで除去可能 |
デメリット | 溶解物は除去できない | 吸着剤の交換や再生が必要 |
吸着でなければ除去できない成分の特徴
凝集では除去できず、吸着が必要になるのは以下のような成分です。
特徴まとめ
- 水に完全に溶けて存在している
- 粒径がナノレベルで、凝集では沈まない
- 電荷を持たない、またはコロイドではない
- 有機・無機を問わず、粒子ではなく分子として存在
吸着が必要な代表的な成分
成分類別 | 具体例 | 吸着剤の種類 | 備考 |
---|---|---|---|
有機成分 | COD成分、界面活性剤、フミン酸 | 活性炭 | 着色・臭気・有機物対策 |
栄養塩類 | リン酸(PO₄³⁻)、アンモニア(NH₄⁺) | 酸化鉄系、ゼオライト | 富栄養化防止 |
無機イオン | Cu²⁺、Zn²⁺、Ni²⁺ など | イオン交換樹脂 | 工場排水で多い |
難分解成分 | 溶解性有機酸、薬品残留 | 活性炭、樹脂系 | 凝集では不可 |
凝集と吸着を組み合わせることで最大効果を発揮
実際の水処理では、凝集処理と吸着処理を組み合わせることで、より高い除去効果と安定した処理水質が得られます。
一般的な処理フロー
- 凝集処理(PAC・水澄まいるなどで濁り除去)
- 沈殿・ろ過(フロックを分離)
- 吸着処理(活性炭やゼオライトで溶解成分を除去)
これにより、濁り・色・臭い・溶解物すべてを段階的に取り除くことができます。
実際の処理例
処理目的 | 処理工程 | 効果 |
---|---|---|
工事濁水の清澄化 | 水澄まいるで凝集 → 沈殿 | SS・濁り除去 |
鉄・マンガン除去 | 酸化 → 凝集 → 吸着 | Fe・Mnの安定除去 |
工場排水の臭気除去 | 凝集 → 活性炭吸着 | 溶解有機物・臭気成分の除去 |
富栄養化防止 | 凝集 → 酸化鉄吸着 | リン・窒素除去 |
まとめ|凝集と吸着を正しく使い分ける
- 凝集:粒をくっつけて沈める(濁り・SS処理)
- 吸着:溶けた成分を固体に引き寄せる(溶解物・臭気処理)
- 吸着でなければ除去できないのは、溶解性の有機物・イオン性成分・臭気など
- 実際の処理では、「凝集→吸着」の組み合わせが最も効果的
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