水処理のポイント ~原水濃度の安定~

濁水処理・廃水処理・排水処理において、凝集剤を効果的に使用するためには、処理対象となる「原水の濃度を安定させること」が非常に重要です。

「マニュアル通りに処理しているのに、処理後の水質が安定しない」「日によって必要な薬品量が大きく変わってしまう」といった課題は、多くの現場で聞かれます。その根本的な要因として、凝集剤を投入する前の「原水の状態」にあることが多いです。

この記事では、凝集剤を使った排水処理で失敗しないための、最も重要かつ実践的なポイントを解説します。

凝集処理の効果を左右する「原水の状態」

処理対象となる原水には、工事現場で発生する工事濁水や泥水、製造業などから排出される工場排水など、様々な種類があります。これらの原水にはSS(浮遊物質)と呼ばれる微細な汚れが含まれており、これを除去するのが凝集処理の目的です。

しかし、このSSは常に均一に水中を漂っているわけではありません。特に、比重の異なる様々な粒子が混在している場合、撹拌が不十分だと、水槽の中は以下のような状態になります。

  • 軽いSS: 水中を浮遊し続ける
  • 重いSS: 徐々に沈降し、槽の底に溜まる

この状態で処理を進めると、浮遊している軽い粒子のみを対象にテストや処理を行うことになり、本当に除去すべき重い汚れが手付かずのまま残ってしまいます。その結果、凝集剤の添加量調査(ビーカーテスト)の結果にばらつきが生じ、処理効果が根本から不安定になるのです。

「撹拌」が不十分だと濃度は安定しない

原水の濃度を均一にするためには「撹拌」が不可欠です。一般的に撹拌機や水中ポンプが使用されますが、ただ動かせば良いというわけではありません。

機械の選定や設置位置、槽の形状によっては、水の流れが隅々まで行き渡らず、流れのない場所「デッドスペース」が生まれます。このような場所には、重い汚れや高濃度のヘドロが溜まりやすく、時間とともに槽全体の濃度バランスが崩れていきます。

濃度が不安定な状態で凝集剤の添加量を決めてしまうと、処理効果が十分に得られない、あるいは薬品が無駄になるといった問題に直結します。

適正な添加量調査は「完全撹拌」が前提

凝集剤の適正な添加量を調査する際は、槽全体のSS濃度が完全に均一な状態で行うことが絶対条件です。

特に、海砂や鉄粉といった比重の大きな汚れ成分が混入している場合は、それらが完全に舞い上がっている状態を意図的に作り、その水でテストを行う必要があります。

もし、沈殿しやすい重い成分を見逃したまま、上澄み水でテストをしてしまうと、「少ない添加量でOK」という誤った結論に至ります。その結果、いざ本番の処理槽で運転した際に、肝心の沈殿した汚れが全く除去されずに残ってしまう、という典型的な失敗を招きます。

【実践チェックリスト】処理前に必ず確認したい3つのポイント

安定した処理結果を得るために、凝集剤を投入する前に必ず以下の点を確認してください。

チェック項目確認するポイント
撹拌は十分か?撹拌機やポンプで原水槽の隅々までしっかりと撹拌できているか?底にヘドロが溜まったままになっていないか?
濃度は均一か?ビーカーテストを行う前に、採取する水の濁りやSS濃度が十分に安定しているか?時間を置いても沈殿が少ないか?
重い成分を把握しているか?原水に比重の重い成分(砂、鉄粉など)が含まれている場合、その沈降特性を理解し、舞い上がらせる対策を講じているか?

これらを事前に確認・徹底するだけで、凝集処理の再現性は劇的に向上します。

まとめ

凝集剤による濁水処理・廃水処理・排水処理を成功させるための最大の秘訣は、「撹拌による原水濃度の安定化」です。

ぜひ、原水槽の中が均一な状態になっているか確認してみてください。

水の流れや汚れの沈降特性を正しく把握し、槽全体を均一な状態に整えたうえで処理を進めること。それが、コストを抑え、安定した処理結果を得るための最も確実な方法となります。