既存設備で撹拌力が弱いときの改善方法

〜交換せずに撹拌を強くして凝集処理を安定させる〜

撹拌が弱いと感じたらまず確認を

凝集処理を行う上で、撹拌(かくはん)は最も重要な工程のひとつです。
撹拌が弱いと、凝集剤が水全体に均一に混ざらず、フロック(凝集物)が小さい・沈みにくい・時間がかかるといった問題が起こります。

一方で、現場では次のような悩みも多く聞かれます。

  • モーターの力が弱く、撹拌が足りない
  • タンクが大きく、全体が混ざらない
  • 渦はできるが、実際は中央しか動いていない

設備更新はコストがかかるため、今ある撹拌機のままでできる改善を行うのが現実的です。
少しの工夫で撹拌力を上げ、凝集処理を促進することができます。

ただし、現状で十分な撹拌が得られている場合には、無理に強くする必要はありません。
撹拌が強すぎると、せっかくできたフロックを壊してしまう場合もあります。
「混ざりにくい」「沈みにくい」と感じるときは、以下の対策を試してみましょう。

撹拌力を上げる10の方法

1. 板で仕切りを入れて混ざる範囲を小さくする

タンク全体を一度に混ぜるのは負担が大きいため、板や仕切りで部分的に区切ることで、
同じモーターでも撹拌力を高められます。

  • 板はステンレスや塩ビ板などでOK
  • 取り外し可能にしておくとメンテナンスが容易
  • 板を入れすぎると負荷が上がるので注意

2. 邪魔板(バッフル)を設置して渦を止める

大きな渦ができていると中央ばかりが回り、全体が混ざらない状態になります。
タンクの壁に**縦板(バッフル)**を取り付けることで、渦を抑えて効率的な撹拌が可能になります。

  • 丸型タンク:壁に4枚程度
  • 四角タンク:角の部分に貼るだけでも効果あり
  • 板の幅はタンク直径の約10分の1が目安

3. 羽根(プロペラ)の大きさを広げる

羽根の直径を少し大きくすることで、水を押す力が強くなります。
外周に薄板を固定するだけでも簡易的なパワーアップが可能です。

  • 軽い金属板で十分(アルミ・ステンレス)
  • 拡張は少しずつ行い、モーターの電流と温度を確認

4. 羽根の高さを調整する

羽根が底に近すぎると泥を巻き上げ、水面に近すぎると空気を吸い込みます。
羽根の位置を上下にずらすだけで、流れが大きく変化します。

  • 底から約30cm離す
  • 水面下1/3〜1/2の位置が目安
  • 軸の固定をずらすだけでも改善可

5. 羽根を上下2段にする

上下2段に羽根を取り付けると、上層・下層どちらも撹拌できるようになります。
深いタンクや容量の大きい槽に効果的です。

  • 羽根の間隔は羽根径と同程度
  • 同じ形状・角度の羽根を使用
  • 回転負荷が増すためモーターを監視

6. 液面を下げて撹拌範囲を小さくする

水の量を減らすと、同じ力でも水の動きが速くなります。
一時的なテストでも、撹拌の傾向をつかみやすくなります。

  • 羽根が空気を巻き込まない範囲で調整
  • 処理時間とのバランスを確認

7. 補助ポンプで流れを作る

既存ポンプの吐出口を槽内に向けて循環流を作ると、撹拌の補助になります。
死水域(動かないエリア)を動かすのに有効です。

  • 流れが強すぎるとフロックを壊すため注意
  • 底面や角の滞留部を狙って設置

8. 羽根の角度を少し変える

羽根の角度を変えると、上下方向の流れが増えて混ざりやすくなります。
少しずつ角度をつけて様子を見ましょう。

  • 角度をつけすぎると過負荷になるため注意
  • 弱い撹拌では3〜5°程度から調整

9. 清掃と点検で本来の力を取り戻す

羽根やタンクに付着した汚れ(スケール・スライム)は、撹拌力を大きく下げます。
まずは清掃と点検から始めることをおすすめします。

  • 羽根の変形や緩みを確認
  • 汚れ除去だけでも撹拌効率が回復

10. ドラフト管の設置(要検討)

羽根のまわりに筒状の管を設置し、流れを一定方向に誘導する方法です。
ただし、構造変更に近いため簡易対応では難しく、導入は慎重に検討しましょう。

まとめ:まずは「今ある力を最大限に使う」

撹拌力を上げたいときは、設備を更新する前に次のような方法を試してみてください。

  • 板や仕切りを設置して流れをコントロール
  • 渦を止めて全体を動かす
  • 羽根の位置・大きさ・角度を見直す
  • ポンプや液位で循環を補助
  • 清掃・点検で本来の性能を回復

小さな工夫でも撹拌力が改善され、凝集処理の効率アップ・安定化につながります。
現場でできる範囲から、無理なく取り組んでみましょう。